「見積書を作成するのに時間がかかって競合に勝てない」「見積の承認フローがうまく流れない」と悩んでいる企業は、見積依頼システムを導入すると効率化を図れます。この記事では、見積依頼システムの概要や必要性、導入によってできること、システムの選び方などを解説します。
見積依頼システムとは
「見積依頼システム」とは、見積書の発行にかかわる業務を効率化・一元管理するためのツールです。
見積書にかかわる業務は、以下の4つにわかれます。
- 作成:顧客から依頼された見積書を作成する
- 承認:作成された見積書の内容を上長などが確認・承認する
- 発行:作成された見積書を印刷・PDF化するなどし、顧客に発行する
- 管理:作成済みの見積書を適切に保管・管理する
多くの企業では、エクセルなどで見積書を作成し、プリントアウトしたりメールを使ったりして担当者が承認フローに沿って閲覧・承認し、発行する形が取られています。
見積依頼システムを導入すると、一連のフローをデータで一元管理できるようになり、業務効率を向上させる、業務の属人化を防ぐ、適正な見積書作成を支援するなど多くの効果を得られます。
見積依頼システムの必要性とは
個々の社員がエクセルやドキュメントなどで見積書を作成している企業では、システム導入の必要性を感じないかもしれません。
しかし見積書のデータが社員個人のパソコンに分散していると、「この企業はAさん担当」といったように業務が属人化しやすいのがデメリットです。さらに個人がそれぞれ使いやすいようにフォーマットをアレンジするため、統一性がなくなる傾向があります。
また、見積書は承認フローを回す必要がありますが、近年のリモートワークや働き方改革で働き方が多様化したことから、紙での承認フローを回しにくくなりました。
さらにサービスメニューが複雑な場合は、見積書の作成に関係部署との連携が求められます。関係する人員が多くなりやりとりが複雑化すると、なにがどこまで進んでいるのか状況が見えにくくなってしまいます。
見積依頼システムを導入すると、こういったさまざまな問題を解消できるのです。
見積の管理をメールでおこなうデメリット
他部署と連携して見積書を作成するようなケースでは、見積書の管理をメールでおこなっている企業も多いのではないでしょうか。その場合、下記のような問題が考えられます。
- 関係部署のだれ宛てで送ればよいのかわからない
- 担当者が作業してくれているかわからないので、さらに状況確認のメールをする
- 返信が来ていたが他のメールに埋もれていて気づかなかった
- 関係部署内でチェックされたものかどうかわからない
- 回答を見積書に転記するのに異なる案件を参照して転記してしまった
このような状態では、依頼した営業担当は締め切りに間に合うかが予測できません。そもそも、状況確認のメールを出したり、情報を抽出するためのメールを探したり、転記したりと無駄な作業が多くなってしまいます。加えて、ミスがないように繰り返しの確認が必要になれば、さらに時間がかかるという悪循環。作業効率がいいとは言えません。
依頼される側も、依頼元からの依頼先がメールの宛先として固定されることで、業務が属人化されます。さらに、休暇や気づかなかった場合には周囲ではフォローできず無理な締め切りに対応することも。このように業務が属人化されてしまうと、特定の人に負荷が集中し、作業時間が増え、残業を強いる恐れもあるのです。
メールでのやりとりは、依頼元にとっても依頼先にとっても、非効率やリスクを抱えており、好ましい状態ではありません。
見積の管理をメーリングリストでおこなうデメリット
担当者と担当者が個人間でやりとりすることによる属人化を防ぐために、関係者を入れたメーリングリストで管理してみた場合はどうでしょうか。さらに転記作業が発生しないようファイルサーバー上の見積書や関係書類を直接編集してもらうと仮定しましょう。
この場合でも、下記のような問題が考えられます。
- やはり作業状況がわからないので状況確認のメールをする
- 自分の担当外の案件のメールも受信するのでメールの数がむしろ増えた
- 依頼元はだれが担当するのかわからない・依頼先もだれかがやるだろうと思っている
- 関係部署内でのチェックが徹底されない
- ファイルサーバーにしたが古い情報で上書きされ先祖返りしてしまった
- 直接編集を避けて、コピーして編集が横行した結果、転記はなくならずに、最新版もわからなくなった
メーリングリストに変更することで、個人間でのやりとりよりは、気づかずに放置されてしまう危険は減るかもしれません。
しかし、状況がわからないという問題は解消されません。さらに、宛先が不特定多数になることでだれが担当者なのか不明瞭になるため、むしろ悪化することも考えられます。結局は、気づいた人、責任感の強い人が一生懸命フォローする状態になり、特定の人に負荷が集中してしまう状況は変わらないでしょう。
またファイルサーバーの利用は便利なようですが、自由にコピー、追加ができるので、ルールの共有と徹底で縛ることを考えなくてはならなくなるのもデメリットです。
見積依頼システム導入でできることとは
見積書にかかわる一連の業務を、個々の社員がエクセルでおこなったり、メールやメーリングリストで管理したりすることで発生するデメリットは、見積依頼システムを導入すると解消できます。
ここでは、見積依頼システムでできることを紹介します。
見積の提出までのスピード・効率化
見積依頼システムを導入すると、見積書作成と承認フローの効率化を図れるため、処理スピードを上げられるのがメリットです。
営業が見積を依頼されたときには、スピーディーに対応することが重要です。時間をかけていたら競合他社に先んじられてしまう可能性があるうえ、対応スピードが遅いと仕事も遅いと評価される恐れがあるためです。
しかし単純な見積書ならともかく、複数の部署が関わるような見積書の作成は、部署間の連携が上手くいかなかったり、関わる人数が多かったりすることで、承認フローに時間がかかる企業が少なくありません。
そのようなケースでは、見積依頼システムの導入で、システム上での一元管理ができるので効率的に処理できます。また、外出先やリモートワーク中での承認、モバイル端末による移動中の承認で、スピーディーに見積を出せることもメリットです。
さらにEコマースやSFAなどと連携すれば、受注から見積書作成までを迅速にシステム処理できるようになるでしょう。
ワークフロー機能
見積を出すときには、担当者の判断ではなく上長の承認を要するのが一般的です。さらに取引の内容が複雑なケースでは、他部署との共同作業が必要になることもあるでしょう。そうすると、工程や承認ルートが複雑になる傾向があります。
そのような状況下での見積書の作成は、見積依頼システムを導入し、ワークフローの仕組みを構築して見える化するのがおすすめです。システム上で締め切りや担当者を案件ごとにアサインできるうえ、見積書を担当者に差し戻す、代理承認するといった機能もあるので、フローが途切れなくなるのがメリットです。
工程確認や承認フローをすべてオンライン上で進められるようになるため、効率的に見積書を作成できるようになるでしょう。
進捗の管理
見積の作成や承認フローを紙やメールで回す場合、どこまで進んでいるのかを管理しにくくなります。
誰がなんの作業をしていて、承認フローがどこで止まっているのかわからないので、進捗を確認するには関係者へ順番に確認しなければなりません。しかし部署が分かれていればフロアまで足を運ぶ必要があったり、担当者が休みや出張にでていると確認できなかったりするなど、非常に手間がかかります。
その点見積依頼システムを導入すれば、見積書の作成業務がどこで滞っているのかが一目瞭然です。指定したタイミングでアラートも出せるので、担当者がうっかりしていたような場合でも、さりげなく承認を促せます。
見積書の進捗管理が楽になるのは、見積依頼システムを導入する大きなメリットのひとつです。
見積データの蓄積
見積依頼システムでは、過去に作成した見積内容をデータとして蓄積していくことも可能です。
見積を出すときには、顧客ごとに異なる単価や値引率を設定していることも少なくありません。そのような場合には、見積書を作るたびに内容を確認する必要があり非効率です。結果的に「A社の見積は〇〇さん」と、業務が属人化することもあるでしょう。
見積依頼システムを導入すると、過去に作成した見積書を顧客ごとに紐付けて管理できるので、担当者が変わっても齟齬のない見積を出せるようになります。過去の見積をたたき台にできるので、作成時間を短縮できるのもメリットです。
さらに見積書に記載する製品や部品の名称・表記を全社的に統一できるので、「出す人によって書き方が違う」といったこともなくなります。
適正価格での見積の作成
どのような企業でも、適正価格での見積を出すのは簡単なことではありません。営業には売上目標が掲げられており、担当者にはノルマが課されていることが多く、営業成績を優先するあまり、顧客の値引き依頼に応じてしまうことがあるためです。
あらかじめ値引くことを想定しており、さらに値引きが適正であれば問題ありませんが、場合によっては薄利、あるいは原価割れとなってしまうこともあるでしょう。
見積システムでは、値引きルールの設定が可能です。設定した値引率以上の金額は入力できないようになっていれば、必要以上の値引きを未然に防げるようになります。
さらに原価管理システムと連携すれば、人件費や管理費まで考慮した原価を意識した見積を出せるようになるので、営業担当者の意識改革にも役立ちます。
見積依頼システムの上手な選び方
ここからは、見積依頼システムを選ぶときに押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
選び方1.クラウド型かオンプレミス型か
見積依頼システムには、クラウド型とオンプレミス型があり、以下のように特徴が異なります。
クラウド型:オンライン上で操作できるのでデータ共有が容易。オンプレミス型より安価に導入できる。
オンプレミス型:カスタマイズ性が高く既存システムと連携しやすい。セキュリティリスクが低い。
見積依頼システムを導入するときには、自社の利用形態に応じて選ぶことが大切です。
基本的には、リモートワークや外出先からの操作が想定される、またコストを抑えて導入・運用したいならクラウド型が適しています。予算をかけて自社にあわせた高度なカスタマイズをしたい、社外からの利用はせずにセキュリティを重視したいような場合は、オンプレミス型を選ぶ企業が多いようです。
選び方2.業種にあった機能が備わっているか
「見積」と一口に言っても、単純に商品単価×個数といった単純なものばかりではなく、業種によって出し方が大きく異なります。
たとえば製造業なら、多くの部材を組み合わせて積算しますが、建設業なら工程ごとに出した見積を積算するのが一般的でしょう。特定の業種を想定して設計された見積書管理システムを選ぶと、カスタマイズにかけるコストを抑えることが可能です。
そのため見積依頼システムを選ぶときには、まずは自社の見積フローを洗い出して精査しておく必要があります。そのうえで、検討している見積依頼システムに自社の業種に適した機能が備わっているかを確認すると良いでしょう。
選び方3.ほかのシステムと連携できるか
見積依頼システムは、SFAや原価管理システムなどと連携すると、より高い効果を発揮します。
とくに営業部門が利用しているシステムと連携できることは、見積依頼システムを選ぶ際の必須条件といえます。営業部門が保有している顧客情報と見積を紐付けることで、顧客ごとに適正な見積を、だれでも・いつでも出せるようになるためです。
そのため見積依頼システムを選ぶときには、既存のシステムとの連携性を確認することが重要です。現在他システムを導入していない場合でも、将来導入する可能性を考慮して、外部システムとの連携性が高いツールを選んでおくのがおすすめです。
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見積書だけでなく、複数部署との協働が必要なら、ワークフロー化を検討してみませんか。
この記事の執筆者:加藤(マーケティング本部)
2017年に新卒でドリーム・アーツに入社。営業部門やインサイドセールスチームでの業務を経て、現在はマーケティング部門にてコンテンツの作成に従事。
物理的な声の大きさだけが取り柄だと思っていますが、文章という形でみなさんに楽しんでいただける情報をお届けできるよう頑張ります!